健康百科 > 「脱腸」について(胃腸科医師  北林 宏之)

「脱腸」について


  今月は、大人の鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)いわゆる「脱腸」についてのお話です。
  鼠径ヘルニアは、下腹部の足の付け根近く(鼠径部)が膨れる病気です。大きさは様々で、うずらの卵くらいのものから子供の頭くらいのものまであります。立っていると膨れているものが、寝たり押したりすると引っ込むことが多く、痛みはない場合が多いようです。鼠径ヘルニアは良性疾患であり、基本的には緊急性はありません。ただし、後に出てくる嵌頓(かんとん)の時は緊急で治療が必要です。
  鼠径ヘルニアが起こる鼠径部は、もともとお腹の壁の筋肉が途切れており、少し弱くなっている場所です。子供と大人では、原因や手術方法が違います。大人の鼠径ヘルニアは、年齢とともに鼠径部がさらに弱くなり、そこから腹膜ごとお腹の中の臓器(腸など)が出てきて皮膚が膨れます。有効な治療は、手術しかありません。下半身麻酔(腰椎麻酔)または局所麻酔で、人工物を埋め込んで弱くなった鼠径部を補強する手術が主流で、手術時間は30分程度です。当院では、主に下半身麻酔で施行しており、10日間程度の入院となっています。
  鼠径ヘルニアは基本的には緊急性はありませんが、嵌頓(かんとん)の時は緊急で治療が必要です。嵌頓とは、膨れた鼠径部が痛くなり、寝ても押しても引っ込まなくなります。その状態が続くと、出てきているお腹の中の臓器の血流が悪くなり、腐ってしまい命にかかわることもあります。そのため、痛みが持続して、引っ込まない場合にはすぐに医療機関を受診する必要があります。

塩谷総合病院   胃腸科医師
北林 宏之
※北林医師は平成20年3月31日をもちまして退職されています。

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